10.タバコと酒と面子
日本人が中国人と付き合うとき、それがビジネスであろうと、プライベートであろうと、決して、面子を潰してはならない。一度や二度、取引をしたからといって、そのまま関係が続くとは限らない。面倒くさいと思われれば、そこで終わるし、割に合わないと思われれば、関係はなくなる。何の連絡もなくなるし、電話してもメールを送ってもなしのつぶてだ。ましては、その取引先やその知り合いなどと食事をし、招いた日本人がご馳走しなかったり、よりによって、「割り勘」にでもしようものなら、相手の中国人は完全に面子を潰されたと感じ、二度と音沙汰はないであろう。その逆に、きちんと中国人のことをわかって付き合っていれば、相当に力になってくれるはずだ。
もうひとつ、初対面や食事の席でもそうだが、中国人の男性はタバコを勧める。日本人が吸わないのであれば、「ありがとう。私は吸いませんので・・」と断れば問題ない。吸うのであれば、ありがたく頂戴することだ。
ただ、もらいっ放しもよくない。宴会などの前には必ずある程度高級なタバコを二、三箱用意しておくことをお勧めする。日本ではタバコを渡すとき、箱から一、二本突き出して相手に取ってもらうが、中国では一本取って、それを手渡す。ただ、逆に「百害あって一利なし」というように害になるタバコを人にあげるのはよくないという人もたまにいる。が、基本的にはこの習慣はとても重要だ。
中国では女性の喫煙者はかなり少ない。日本のように店の前にたむろして座ってタバコを吹かしている光景は見ない。
酒もタバコと同様、とても重要だ。基本的には日本と同じで、ビールや白酒(日本の「しろざけ」とは違い、日本酒やウォッカに近い)という度の強い酒をよく飲んでいる。
私は酒が飲めないので、ちびちび飲んで、みんなわかってくれていたので、あまり問題はなかったが、日本ほどではないが、やはり勧めてくる人もいる。中国では若い人でも大人の飲み方をする。ゆっくり、飲める人だけ飲む。日本のように訳のわからない音頭をとって一気飲みさせるようなことは稀である。
私は黒龍江省の鶴岡と青島(チンタオ)というところの北地方に住んでいたので、南の方の事情はよくわからないが、北の方はとにかく体が大きい。一メートル八十ぐらいで、体重が八、九十キロもある人がざらにいる。よって食べる量も飲む量も半端じゃない。
鶴岡を離れる前日、毎朝乗っていたタクシーの運転手に食事に誘われ、昼から羊肉串(焼き鳥の羊版)を食べながら、話をした。その運転手と同僚はビールを水のように飲み始め、昼の三時間だけで二人で十五本、夕方からカラオケに行き、そこで三人の同僚が加わり、さらに同じぐらい飲み、最後は料理屋で、ビールと白酒をさらに五時間ぐらい飲み続け、さすがにベロベロになっていた。家の前までわざわざ送ってくれ(もちろん飲酒運転だった)、「明日はバス乗り場まで連れて行くからここで待ってろよ!」と優しく言ってはくれたが、予想通り、飲みすぎてダウンしたのだろう、次の日そこにその運転手の姿はなかった。
関係が長く続くかどうかは別として、言葉がよくわからなくても、習慣をわかってさえいれば、いい関係が築ける。
後になって知ったのだが、住んでいた黒龍江省の北の方は治安が悪く、相当に悪い人間も多いらしい。私は幸い、さほど悪い人間にも出会わずに済んだ。運がよかったのか、比較的いい人たちに恵まれた。
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