22.空港の危機管理
9.11のテロがあってから、空港でのチェックがかなり厳しくなってきたと言われているが、私が以前、北京へ行き、その後、列車でハルピンへ行き一週間、北京に戻り更に一週間泊まったときのことだ。靴の替えを持ってきていなかったので、二週間同じハイカットの皮靴を履いていた。ご想像通り、当然かなり臭くなるはずだ。帰国前の北京空港で、ゲートを抜けたとき、職員に怖い顔で呼び止められ、「靴を脱げ」と言われた。椅子に座って、言われるがままに脱ごうと紐を解いた。麻薬の「運び屋」に見られたのは心外だったが、へらへら笑いながら「臭いですよ」などとは言うに言えず、神妙な面持ちで居る振りをしていた。職員が加勢して、脱がせてくれたのはいいが、その靴の外側を隅から隅まで見たあと、中を見ようとしたその瞬間、「うっ!?」と唸りながら、顔をしかめた。「だから言わんこっちゃない」と言いたかったが、怒らせたくなかったので、気の毒そうに見るだけにしておいた。
これは危機管理のいい例であるが、対照的に日本の空港での悪い例を挙げておこう。
ちょうどSARSが流行り始めた頃の話である。
まだニュースに出ておらず、何も知らない私は北京と天津を含めて十日間一人で旅行に行った。あとで知ったのだが、日本のニュースなどで、大騒ぎになっていた頃、私は北京の天安門や故宮あたりをすごくいい気分で闊歩していた。
最後の日かその前日かに北京でもSARSのニュースがあり、内心ぞっとした。
旅行が終わり、今度は北京の空港では何事もなく、無事、成田空港へ到着した。なぜかガラガラの空港で、並ぶことなく日本人用のゲートを抜けようとしたとき、「どこへ行かれたんですか?」と職員が聞いてきたので、内心ハラハラしながら「ちゅ、中国です」と答えた。そのまま病院へ直行かもしれないという不安が頭をよぎったが、見事に裏切られ、「そうですか〜。お疲れ様でした〜」と、ものすごく笑顔だった。私は救われた気分だったが、危機管理の面で言えば、話にならないのではないだろうか。もちろん私は発症することもなく元気であるが。